長い長い登り窯に圧倒されながら工房に入ると、所狭しと並ぶ陶器の数々。湯のみ、徳利など、使いやすさを重視した手馴染みの良い陶器が多い中、よく見ればユーモアあふれる動物たちや不可思議な妖怪のような置き物がこちらの様子をうかがっている。
ここ「大熊窯」は、丹波焼の伝統文化を守り続けてきた大上巧さんと、その次女である伊代さんの親子2代の作陶一家。

巧さんの代表作でもある「海老徳利」は、丹波地方で江戸後期から縁起物として受け継がれてきた作品のひとつ。これで1杯いただけば極上のお酒と会話が楽しめるに違いない、と私たちの想像をかきたてる。


一方、伊代さんの作品は日本の昔話から伝わる「妖怪」や生き物達をモチーフにした作品が中心。「皆さんからは妖怪と言われるのですが、実は狛犬や仏像など昔の日本の美術を基本に作ることが多いんです」と恥ずかしそうに話す伊代さん。彼女の作品に対する愛情を感じながら再び作品を見ると、恐ろしかった作品がどこか愛嬌のある可愛い生き物に見えてくるから不思議だ。


昔ながらの味わい深い作品を作る巧さんと、斬新で画期的、かつ女性らしい視点で作品を作る伊代さん。2人の作品は一見、真逆のように見えるが、仲良く肩を並べる姿は、どこかしっくりとなじんでいる。この絶妙なコンビネーションは父と娘、陶工の誇りの深さ、伝統の大切さを感じさせている。

先祖代々から続く窯元を受け継いだ巧さんは、今田町の秋の恒例イベント「陶器まつり」の仕掛け人の1人。
丹波焼の伝統を守りたいという想いを持つ傍ら、子どもたちにも陶芸の楽しさを知ってほしいと、出張教室を定期的に開催しています。娘さんのように次世代を担う後継者を輩出するべく、
今後も丹波焼の素晴らしさを伝え、ご自身も真剣に作陶に取組む姿勢はきっと多くの人の心をつかんでいくにちがいない。


■大熊窯

住所:兵庫県篠山市今田町上立杭尾中1
電話:079-597-2345
営業時間:9:00~17:00
定休日:不定休
駐車場:あり






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